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一東京都民のチラ裏的放射線被曝問題メモ [原発]

というわけで、共産党都議団が都内全域で空中放射線量を測ってまわった、というニュースにはひじょうに考えさせられた。「東京都民は大丈夫かというと実は結構微妙である」という話である。たまたま俺の家が比較的汚染の酷いほうに入ってるから、個人的メモも兼ねてしばし考えてみることにした。まぁこんなブログを読む人もいないだろうが、福島の方などからすれば「なに甘いこと言ってやがる!」という話ではあるのだが。

じつのところ、これまで新聞には毎日各地の放射線量測定結果なんかが書いてあって、新宿は毎日0.06マイクロシーベルト毎時ぐらいということになってるから、「あぁ東京は平時とほとんど変わらんのか、大丈夫だね」という気分になっていた。だが、共産党の数字はちょいと違う。高い。

とくに俺の住んでる東京湾岸部あたりでは0.181マイクロシーベルト毎時みたいな数字が出てる。お上の出してる新宿の数字のなんと3倍! 年間累計でいうと、24*365*0.181=1.585ミリシーベルト。よく出てくる例の「1ミリシーベルト」ラインを大きく超しているのである。

なんでそんなに違うのだ、という話になるわけだが、まぁこれは別に東京都が情報を秘匿してるわけではなくて、まぁ理屈でわかるところではある。

ひとつには測定地点が「ホットスポット」なのか否か、という問題だろう。放射性物質がたまたま多く降下してきた地域はより強く汚染される、という例の話だ。程度の差はあれ、そのへんの濃淡というのはどうしても出てくるのであろう。で、今回たまたま「山の手」は軽く、「下町」は重く、という結果になった、と。カミサマは非情であった。

もうひとつは新宿のが地上十数メートルで測ってるのに対して、共産党は地上1メートルで測ったから、であろう。とうぜん、地面に降りつもった放射性物質の影響で、地面に寄ったほうが高い数字が出る。そして、明らかに地上1メートルのほうが「害があるのかないのか」の目安として重要なわけだが、「原発安全神話」があったせいなのかどうか、そういう観測体制はこれまで全く整っていなかった。で、共産党が今回乗り出した、というのがこれまでの流れなのだろう。とりあえずGJ。

で、以下は個人的な感想。

共産党調査によると、上にもかいたけれども、どうやら都内も東北ないし東方向にむかうほど汚染がひどいという傾向がみてとれるわけで、その中では俺の住んでいる地域はかなり数値が高い。気持ちは良くない。ただし、ただちに問題(苦笑)なのかどうか、というところがなかなか微妙なのである。

たとえば、日本地質学会のHPをみてみる(ちなみにここのデータも地上1メートルで計算してるらしく、共産党のと比較するのに都合がよい)。これをみると俺の家のあたりの自然放射線量=バックグラウンド量は0.036~0.054μG/h(計算上マイクロシーベルト毎時と同じ数字になるという)で、年間換算だと0.315~0.473ミリシーベルト。共産党のデータは年間1.585ミリシーベルだったから、ざっと計算すると年間1.1~1.3ミリシーベルトぐらい余計に被曝してしまうことになる。

【 注:ただし日本地質学会のHPでは、ここで示す自然放射線の数値には「宇宙線による放射線量(おおむね年間0.33 ミリシーベルト)は含めていない」という意味のことが書いてある。仮に共産党のデータが宇宙線込みの数字だったとすると、両者を比較するには日本地質学会のデータに0.33ミリシーベルト/年を加算しないといけない。その場合だと、俺が家で余計に被曝する放射線量は年間で0.8~1.0ミリシーベルトぐらい。数字的にはやや緩くなりますな。文系なので(笑)この辺はどう考えればいいのか、正直よくわからないのだが】

世の中で騒いでいる「1ミリシーベルト」の何が問題だったかというと、ICRPが「一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度=1ミリシーベルト」といってたからである。つまりは単に1ミリ浴びたからマズイというんじゃなくて(実際、さきの日本地質学会のHPみても、岐阜県あたりは自然放射線で年間1.1ミリぐらい浴びてる計算になる)、「自然界にあるバックグラウンド分にプラスして、余計に1ミリ浴びるとよろしくないよ」という話であったわけで、いままさに俺ンところはそういう事態になっているのである。

ただし、である。これは以前調べたのだが、自然に被曝する放射線量は世界平均2.4ミリシーベルト。これに対して日本平均はたしか1.4ミリシーベルト。日本では空気中の放射線量が相対的に少ないからこういうことになっているらしいのだが、であれば、いま俺ンとこで年間1ミリシーベルト被曝量が増えても、単に世界標準(笑)に到達しただけではないのか? たしか原発事故直後にローマの放射線量は0.25マイクロシーベルト毎時である、みたいな話が広まったことがあった。これも地上何メートルで測ったのか、とかよくわからんデータではあるんだけれども、まぁ常識的な観測データだったとすれば俺ンとこよりまだまだローマ高いじゃねーか、ということになる。ま、自然と人工の違いはあっても、同じ人間が同じ放射線量を浴びたんなら、健康面でそんなに違いがでてくるわけないでしょ?と思うのである。ならばまだまだ大丈夫なのではないか?

もっとも油断はできんのである。ICRPがあえて「人工放射線は年間1ミリまでネ」という言い方をしていることには、実は深い意味があるのかもしれんのである。たとえば、放射能の影響というのは、人種とかによって違ってくる、ということをICRPの言い回しは示唆しているのではないか? つまり、「放射線が高い地域でずっと暮らしてきた人々=ヨーロッパ人は放射線に対する耐性が強い」「弱い地域で暮らしてきた人々=日本人は耐性が弱い」という話だったらどうなるか? 結局、自然放射線を浴びる分には想定内だからそれぞれ差があってもいいんだけど、これにプラスして浴びる人工の放射線のほうはキッチリ管理しないとダメだかんね、ということを言いたいのではなかろうか? ならば「日本人はヨーロッパ人に対して、まだ年間1ミリののりしろがあるから、余裕あるよね」とは言えなくなってしまうのである。


そういえば、「ブラジル・ガラパリの人たちは年間10ミリシーベルトを浴びてるけど別にガンになる確率が増えてるわけではない」という話があるにもかかわらず、「じゃ日本人だって年間10ミリぐらいなら大丈夫」という風に議論が転がっていかないのがずっと不思議だったのだが、そのあたりも、ひょっとして「代々ガラパリに住んできた一族は放射線に強い体質を獲得している」という命題を導入したらまったく不思議でも何でもなくなるのではないか?

もっともこの想定が正しいとするならば、放射能に対して「虚弱」な日本人がヨーロッパとか放射線量の高いところに行って暮らすようになるとガン化の危険が増加するはず、といったハナシにもなってくるのである。ほんとうにそんなことがあるのか? 日焼けにたいする耐性とかだったら色素の有無とかであって当たり前だけど、DNAへの影響みたいなミクロレベルで人種差なんてあるのかよ、と激しく疑問を感じる俺もいるんだが、一方で薬の効き目みたいなレベルではかなり人種差がある、みたいな話も聞いたことがある。やはり文系出身の限界がこの辺に露呈してしまって、よくわからなくなってしまうのである(笑)。

閑話休題。今回は空気中の放射線量の話だったわけだが、「放射線には食物などを通じた体内被曝などもあるので、ひょっとしたら全被曝量は体外空気中からの被曝量の3倍ぐらいをみとけばいいのではないか」みたいな、根拠はハッキリしないけれども何となく目安にはなるので便利な想定をする人もいる。その場合、年間被曝量は数ミリシーベルトになってしまうかもしれぬ。悪いほうのシナリオということでいえば、東京でフツーに暮らす俺たちもそれぐらいのことは想定しておかねばならないということはとりあえず言えるのだろう。

もちろん、俺のように(今でこそ禁煙しているけど)数十年タバコ吸ってきた人間は、放射線でいえば数百ミリシーベルトを浴びてきたようなもので今さら大勢に影響がないのは分かりきったことなのだが、やはりこんなレベルでも子供にはどうなんだろうなぁと考えてしまうところがある。とにかく共産党さんでも何でもいいから、その辺の影響を抑え込むための英知を是非に発揮していただきたい。

そして、もひとつ。よくよく調べればわかるのかもしれないけれども、ここで書いたような「人種によって同じ放射線量を浴びても影響は違うのか」「ガラパリの皆さんにかんする知見は日本人にとってあんまり意味ナイのか」「人口の放射線と自然放射線を区別する意味はあるのか」(以上はみな同じことを別の方向から言っているにすぎないのだが)といった疑問は、研究者の方なり科学ジャーナリストの方なりに明解な解説をしていただきたい。そのへんのことも寡聞にして聞いたおぼえがないのである。何度も書くけれども、この辺、とても重要なことだと思うのだが。


【6/3追記】

などとグダグダ書いてきたわけだが、ここにきてだんだんわかってきました。自然放射線と人工放射線のちがい。このページなんか、とてもわかりやすかった。いやぁ、ちょっと探せばすぐあるじゃないですか。さいごのほうが、ちょっと怪しげな方向にいってるけどね。ともあれ自らの不明を恥じいる次第(笑)。

つまり自然界でわれわれが出くわして内部被曝してしまう放射性物質は多くの場合カリウムとかラドンなのだが、こいつらは体内にほとんど蓄積されない、と。一方の人工のほうの核種には甲状腺に集まりやすいヨウ素、骨に集まりやすいストロンチウムとかがあるんで、いったん体内にとりこまれると一極集中ということもあって影響が大である、と。

なるほど、そういう意味では単純に比較はできないんですなぁ。

理屈からいえば、大気中とか、とにかく体の外部から浴びる限りでは自然だろうが人工だろうが放射線の効果に差はない(ということでいいのかな?)。ところがいったん体内に入るとなると人工のは微量でも強力である、と。そうすると「人工放射線でプラス1ミリシーベルト」という言い方にはやっぱりそれなりの根拠があるようですなー。

ん? でもそうすると、今回の共産党調査じゃないですが、そのあたりの地上で計測した空中放射線量から「年間累計1~2ミリの被曝」とかいう数字が出た場合でも、それが「体外からの被曝」である限り自然放射線とおなじ性格のもの、と見ていいわけですよね。ガラパリの自然放射線10ミリ=体外からの被曝がさほど恐るるにたらないということであれば、その年間累計1~2ミリという数字自体はさほど怖くないんじゃないの?

むしろここには出てきていない数字――大気中とかから回り回ってわれわれの体に入ってくる人工の放射性物質がいかほどあるのか、というのが問題ということになりはせんか。 

う~ん、街角の放射線値がちょっと高いというとき注意すべきなのは、直接被曝することというより、「その辺の空気中に浮いてる放射性物質を吸い込んで体内被曝すること」という理解でいいのかな? やっぱり浮いてんのかな、そういうの? 俺のようなジジイはともかく、子供のことを考えるとあんまり余裕かましてもいられねーみたい。まだまだ勉強しないといかんなぁ。
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