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『現代オカルトの根源』を読む [読書感想文]

しばらく行方不明だった(笑)大田俊寛著『現代オカルトの根源』が出てきたので読んでみた。いぜん、オウム真理教を準備した思想」とは何であったかを思想史的なポジションから書いた方で、個人的にはとても注目している人である。

で、著者の主張を、以下、俺流に要約してみるか。例によって正確かどうかは保証しない。


現代のオカルトを俯瞰してみると、そこにはブラヴァツキーの神智学に由来する一大潮流がある。どういうことかっつーと、19世紀の進化論以降、人々は昔ながらのキリスト教なんぞ素直に信じられなくなってしまったワケで、そういう間隙をついてある種の人々の欠落感を埋めたのが神智学であった。

つまり、人間というのは実はそれぞれに固有の「霊性」というものをもっており、しかもそれは年月を重ねていく中で「進化」する可能性を秘めている、そういう存在デアル。いってみれば、近代的合理主義が広まる中で、人々は旧来の宗教が語り継いできたようなものをそのまま信ずることができなくなっちまったので、そこに近代的な進化の概念をつぎあわせることによって、新たな信仰の体系を築いたのがブラヴァツキーであった。

で、さらにひとつ言っておくと、こうやって人間の「霊性」は進化する可能性を秘めてるんだが、一方で獣的な方向に退化することもある。進化方向と退化方向の双方向に未来はひらかれており、進化を促すのが神智学の教えであるならば、一方で人間を獣性にひきずりこむ悪の勢力もある。そういう善悪二元論もまた、連中の思想の基本にあるらしい。

というわけで、「霊性の進化と退化」+「善と悪の闘争」みたいなものとして人類史を読み解く思想が誕生したんだが、それがのちのオカルト業界に多大なる影響を及ぼしていく。シュタイナー、エドガー・ケイシー、アダムスキー(笑)、オウム真理教、幸福の科学、みな然り。結論としてはこういう系統の思想はちょっと危ないので注意しましょう、ということであるようだ。



で、ここからが感想。

前世紀末以降のさまざまなオカルトムーブメントを、ブラヴァツキーの継嗣としてくくってしまうというのは、とても面白い見方であると思う。

もっとも、ちょっと強引かなぁと思った点もあった。

本の中にデーヴィッド・アイクという英国のニューエージの人が出てきて、やっぱりこういう系譜の人として紹介されている。この人は「人類というのは、超古代から爬虫類的な姿をしたレプティリアン型宇宙人(!)に遺伝子操作とかなんとかいろいろされて、操られてきたのだッ」と言っているらしい。そこだけ読むと、「なんだリアル宇宙人の介入ジャン」という話で、霊的進化もクソも関係ないような気がするンだが、一方で、「人間の霊的なポテンシャルは実はレプティリアンたちを凌駕している」みたいなストーリーもあるらしく、そういう意味ではどっか善悪二元論的な霊的抗争の枠組みにおさまるのかもしらん、よくわからんが。

ま、それはそれとして、何で強引に感じたかというと、著者自身も本の中で触れているが、この宇宙考古学的な「悪しき宇宙人の介入」というアイデアは南山宏氏なども一時盛んに訳していたゼカリア・シッチンあたりからパクったものらしく、いや、そういう話はそもそもUFOシーンでは既に十二分に語り尽くされたモチーフなので、まぁ何か「霊的側面」みたいなものを貼りつけたところは新しいのかもしれんが、やはりこのアイクという人物は二番煎じの人ではないか、という気がしてくる。ブラヴァツキー/リードビーター/シュタイナー/エドガー・ケイシー/アダムスキー(笑)とかいう綺羅星の如く並ぶメンバーの中にあっては、「何この小物」「埋め草かナ」「場違いじゃネ」的な感想を抱いてしまったのだった。

あと、「進化」みたいなキーワードを霊的世界観にくっつけるというのが近現代のオカルトの或る典型であったとして、いわばそういう竹に木をつぐような無茶な試みがこんなにもうまくいったというのは何なのかという思いもある。たしかに「進化」という近代の意匠をまとうことが有効だったという説明はあるんだが、数十年前から「もはやモダニズムは終わった」みたいにいわれている時代でもあるし、それだけじゃうまくいかんのではないか。

ただ、筆者はもともとグノーシス派を専門とする宗教学者ということで、いわばアカデミズムの人である。そんな人がこういうアヤシイ世界をマジ考察の対象にしたことはとても素晴らしいと思う。

本の中には、例の2012年の「マヤ終末予言」で名を売ったというホゼ・アグエイアスという人も紹介されていて(この人も一連のラインナップの中では「埋め草要員」のような気がするけれども)、何というか、そういうところまで目を配っているのである。「ほんとにおスキなんですねェ」といって著者の肩をたたいて励ましてあげたい、そういう気分である。


現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)

現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 (ちくま新書)

  • 作者: 大田 俊寛
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 新書



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