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思考は現実化する [UFO]

オレは別にSFに詳しいわけではないのだが、「思考の現実化」をモチーフとして取りあげた作品というのは少なからずあるようだ。頭の中でいろいろ考えたりしたコトやモノが何故か現実の世界に出現してしまう、というアレである。たとえば古典的SF映画の「禁断の惑星」がそうであるし、これまた映画にもなったスタニスワフ・レムの「ソラリス」もそういう作品である。

実はそれと似た現象はリアルな世界でも起きている――といってもこれはUFOにまつわる話なのだが、「飛行船がもう少しで実用化する」という19世紀末、アメリカには今で言うUFO=幽霊飛行船が出現したわけだし、フランスのベルトラン・メウーによれば、20世紀の初めのパルプ雑誌には「自動車を追跡するUFO」「車を故障させてしまうUFO」「人々を誘拐するUFO」、つまりはその後になって実際に報告されるUFO譚のモチーフがもれなく登場しているんだそーだ。

「未だかつて誰も想像したことのないUFO」というのは基本的に出現しない。というワケで「UFO現象というのは目撃者の意識が投影されたものでアル」という説が出てくるのは理由なきことではない。

で、いまさら何でこんなコトを書いているかというと、いまふと気づいたことがあったからだ。

現代のUFO伝説が始まったのは1947年6月24日、アメリカの実業家であるケネス・アーノルドが9つの飛行物体を目撃したのがはじまりであるが、その物体は何やら三日月っつーかクロワッサンみたいなかたちをしていたらしい。つまり円盤状ではなかった。ところが「水を切って跳ねる円盤みたいに飛んでいた」というアーノルドの証言が一人歩きして、以来、「空飛ぶ円盤=フライング・ソーサー」という言葉が流布していく。

そして今。「三日月型をしたUFO」はあんまり飛んでいない。球体というのもあるけれども、やっぱり円盤型が主流のようである。そう、みんなが「UFOは円盤のかたちをしてる」と思っているから、円盤が出現する。

もちろんここで「思考が現実化したんじゃなくて、メディアでそういうイメージがバラまかれたんで、単にそういうの幻視したんじゃNE?」とゆー合理主義に立った解釈もあるわけだが、とりあえずそれは面白くないし、「着陸したUFOが着陸ポッドの痕跡を残していった」みたい報告例も多数あるので、ここでは却下しておきます。近代UFO伝説六十有余年の歴史は、まさに「思考の現実化」の歴史であった・・・のかもしれないぞ。


サルバドール・フレイクセド氏について [UFO]

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Salvador Freixedo

あとヴァレの本には、UFOの超常現象的側面に注目してきた南米の研究者として Salvador Freixedo という人が出てくる。サルバドール・フレイクセドと読めばいいのだろうか? スペイン語で本を書いてるようで、やはり英語に翻訳された本はあんまり無いみたいだ。とりあえずググってみると英語版のウィキペディアに記述があった。だいたい次のようなことが書いてある。

1923年、スペインはガリシアの生まれ。カトリックの信仰篤き家庭で育つ。16歳でイエズス会に入り、1953年には司祭となる。1947年以降、アメリカ大陸の各国を渡り歩く。1950年代からカトリック教会への批判を開始。本の刊行にかんして投獄され(引用者注:名誉毀損か何かだろうか?)、1969年にはイエズス会から追放される。1970年代になると超心理学にかかわる分野――とりわけUFO現象と宗教との関係についての探究に取り組む。


というわけで、なかなか骨のありそうな人物である。没年が書いてないのでご存命かと思うのだが、すると既に齢90歳といったところか。長老だ。たぶん超常現象とUFOのかかわりみたいなところを、つまりはジョン・キール的な問題意識で、しかも宗教を絡めて語っている人であろうと想像される。

しかし「元イエズス会士のUFO研究家」ですぞ。イグナチオ・デ・ロヨラ。フランシスコ・ザビエル。南蛮人。転び伴天連。エクソシスト。聖水。懺悔。魔女狩り・・・なんか、カトリックのことを知らない東洋人としては、連想ゲーム的に妄想が炸裂してしまうではないですかッ? 考えすぎ? この方も日本では全然知られていないようなので、誰かスペイン語のわかる人にちゃんと紹介してほしいものである(と、いつも通り人をアテにする私)。



ベルトラン・メウー氏について [UFO]

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Bertrand Meheust

UFO好きとかいいながら、ここ数年、ヴァレの本を読むこと以外にはとりたてて何もしていない。それでも彼の本の中には日本ではなかなか知られていない人物が登場してくるので、余裕があれば調べてみたいような気はしているのだが、そこんトコがなかなか難しい。

たとえば、これはかなり前に当ブログでもチラッと書いたが、フランスの社会学者でベルトラン・メウー(Bertrand Meheust)という人がいる。搭乗者事例と「それ以前」のSF小説との連関などについて本を書いているのだそうだ。畏友magonia00氏によれば、SF作家のイアン・ワトスンはメウーの著作に触発されて『奇蹟の訪問者 Miracle Visitors』を書いたらしい。けっこう重要な人物のような気がしないでもない。

で、いろいろとググったら、UFO研究の親戚筋(笑)ともいえるUMA(未確認生物)を研究しているローレン・コールマンがメウーに関していろいろ書いているページに行き着いた。2人の生年月日は1947年7月12日でまったく同じ。その辺の親近感もあるようで、かつメウーの著作はどうやら英語に翻訳されていないフシがあって英語圏では知名度が低いのだろう、彼の事績をやや詳しく紹介している。以下大意。

では彼のことを紹介してみよう。

フランスの資料にあたってみると、ベルトラン・メウーは1947年7月12日生まれ。ママにいろいろ文句をつけたがる小さい頃には、「なんで3週間早く6月24日に産んでくれなかったんだ」としばしば文句を言っていたそうだ(ちなみにメウーと私には貧乏な労働者階級の家に生まれた、という共通点もある)。

フランスで活動する研究者・著述家であるメウーは、ユング派ユーフォロジー、超心理学、社会学、さらには政治学の専門家として知られている。かつてはトロワで哲学の教授をしていたが、現在では退職している(ちなみに私はといえば、かつてはフルタイムで働く研究者として、大学でドキュメンタリー映画や社会学、社会福祉を担当する准教授・助教授を務めていた。退職したのは2003年である)。

メウーが1981年に執筆した修士論文は、ウィリアム・ジェームズにかんするものだった。彼は社会学博士だが、それは1997年に動物磁気にかんする研究でソルボンヌ大から受けたものである(ちなみに私の修士論文は1978年、「職業上の性差別」をテーマにしたものである。博士課程にも進むことはできたのだが、PhD、すなわち博士号をとるために必要な二つの単位を取れずに終わってしまった――ひとつは社会人類学、もうひとつは社会学であった)。

彼は「インターナショナル・サイキック・インスティテュート」の運営委員会の一員である(ちなみに私は「未解明現象探究協会」ならびに「国際未確認動物学協会」の創設メンバーであり、名誉会員かつ永世会員である。もうひとつ、「国際未確認動物学ミュージアム」の創設メンバーにして館長でもある)。

1975年と1978年に、それまで本を出したことのなかった私は、共著として2冊の本を刊行した(相方はジェローム・クラークだ)。そこで扱ったのはユング派ユーフォロジー、未確認動物学、フォーティアン=怪奇現象をめぐる話だった。以来、読者諸兄の多くはご承知であろうが、私は未確認動物学・社会学・伝記・アノマリー現象・社会福祉・人類にまつわる様々なミステリー――といったことどもについて本を書き続けてきたのだった。

一方、1978年にベルトラン・メウーは最初の本を出した。それは「UFO現象が騒がれるようになる前に、それを先取りするようなSF小説が登場する」というナゾをめぐるものだった。その際に彼の相談役をつとめたのはエメ・ミシェルだった(私の場合はアイヴァン・サンダーソン、ベルナール・ユーベルマン、ジョン・キールであった)。メウーの本は、20世紀はじめのパルプマガジンに載った三文小説が、それから何年もあとになってようやく出現する現象のことを書き記している、とは如何なることか検証しようとするものだった。そう、考えてみても欲しいのだが、ケネス・アーノルドが現代における「空飛ぶ円盤」の歴史の幕を切っておとす1947年というのは、その時点ではまだずっと遠い先のことだったのだ。

メウーの本はしばしば懐疑論者によって引用されるわけだが、彼らとしては「UFO現象というのは単に心理学的な説明で事足りる」という主張を後押しする、有力な論拠をそこに見てとっているワケだ。だが、メウーのテーゼというのは実はもっともっと複雑だ。メウーの本を読むと――それはカール・グスタフ・ユングの大いなる影響を受けているワケだが――実は彼はそこで「地球外生命仮説」を弁護していたりする。

1999年、彼の大学における研究テーマ――つまりは霊媒についての研究が2巻本(計1200頁である)として刊行された。その本は超心理学の界隈で新たな論争を巻き起こした――いや、それは心理学の世界においても然り、であった。それは18世紀末からこの方、人間には秘められた潜在的な能力があるのか/ないのか、といった問題を争点化してきた研究史や学説史、あるいは様々な概念の歴史をたどり直すものだった。
(以下略)


別に聞かれてもないのに自分のコトまで書いちゃってコールマンさんお茶目なんだから、という感じである。ちなみにUFOファンの方には釈迦に説法であるが、「1947年6月24日に生まれたかった」というのはもちろんケネス・アーノルドの目撃があったまさにその日のことを言っているのである。

というわけで、どうやらメウーさんは「ユング派ユーフォロジスト」という括りに入るらしいが、アッチではそういう呼称がフツーにあるのだろうか? で、コールマンさんも「別にユング派だからといって全部心理的現象に還元してるわけじゃないヨ」的なことを言ってるのだが、ユング御大の『空飛ぶ円盤』を読んでもET仮説を全否定してるわけではないので、メウーもその辺は含みを残した議論をしてるのかもしれない。よくわからんけど。

もちろんフランス語は手も足もでないので、英語で何かメウーに触れたものはないかと調べてみると、 Jeffrey J. Kripal著『Authors of the Impossible』という本が、ヴァレとかメウーについて論じていることがわかった。とりあえずKindleで買ってみた。しかし、英語力が貧弱なのでいつ読めるかはわからんというのが現状(笑)。



Authors of the Impossible: The Paranormal and the Sacred

Authors of the Impossible: The Paranormal and the Sacred

  • 出版社/メーカー: University of Chicago Press
  • 発売日: 2011/09/16
  • メディア: Kindle版



珠玉のことば [UFO]

或る研究家のことばである。1989年の発表であるらしい。


今日のUFOにとても良く似た空中現象は19世紀には「空飛ぶ船」というかたちで報告されていたわけだし、それらはいわば人間の期待するかたちを模倣するかのように、ジュール・ベルヌの時代には飛行船、1946年の時点ではゴーストロケット、現代にあっては宇宙船といった具合にその姿を現してきた――じっさい、UFO現象というのは常に人間のテクノロジーの一歩だけ先を歩いてきたようにみえる。

過去10年間というのは、分子生物学が現代文明のなかにあって電子工学や宇宙工学といったものより遥かに魅力的な存在になってきた時代だった。となると、人間に対して遺伝子工学的な操作を施す「エイリアン」、といったイメージが現代において膨らんでくるというのもさほど驚くべきことではない。

というわけで、ETH説を支持している人たちは、この現象が発しているメッセージの本当にうわっつらの部分を見ただけで、やすやすとそのワナに引っかかってしまっている――ということになるのではないか。

CBAの英文機関誌 [UFO]

というわけで、以下、フツーの人には意味不明の話。

私淑しているジャック・ヴァレが共著として出した「Wonders in the Sky」という本をKIndleでパラ見しているのだが、これは19世紀以前であったろうか、世界各地で目撃されたUFOのはなしを様々な文献を渉猟してまとめた本であって、中には日本の話も出てくるが、その話のほとんどが1960年代に刊行されていたらしい日本の雑誌「Brothers」を典拠として挙げておる。

はて、そんな雑誌あったのか? というわけで、いろいろとググってみたところ、丹羽公三という方の「Kz.UFO現象調査会」なるサイトにたどりついた。

小生浅学のため存じ上げなかったのだが、このサイトでは内外のさまざまな関連書籍・史料が幅広く紹介されており、ふむこの方、在野のベテラン研究家であろうかとさらにググってみると、この丹羽氏、並木伸一郎氏が会長をしている日本宇宙現象研究会(JSPS)のエライ方のようで、やはり同会に関わっておられたということなのだろう、早世された志水一夫氏を偲ぶ会の会合に、並木氏などとともに参加された際の記事などもネット上でみつけることができる。

なるほどこういう業界はオレのような半可通の知らないところでちゃんと存在しているのだなという感慨を抱いたものである―――いやいや、すっかり話がわき道にそれてしまったようだ。閑話休題。

で、この「Kz.UFO現象調査会」のホームページから、「UFO最新情報保存庫」→「新規UFO関連資料掲載」→「平成18年6月 新規掲載」と入っていったところに、この「BROTHERS」の表紙写真が掲載されていたのだった。2冊あって、ともに1964年刊。ひとつはVol.3 No.1、もうひとつはVol.2 No.Ⅰ-4と読める。
で、そこにはCBA(Cosmic Brotherhood Association)の文字。

そう、どうやらこれ、1950年代半ばから約10年間、国内で盛んに活動を繰り広げたUFO研究団体CBA=宇宙友好協会が出していた英文誌であったようなのだ。じっさい、このサイトには「CBA率いる松村代表のあいさつ」と題した記事の写真も掲載されていて、つまりこの団体を仕切った(とされる)松村雄亮氏の肝いりで発刊された雑誌であるらしいこともわかる。先のサイトの写真をみると表紙はカラーだ。凄げぇ力入ってる。

なるほど、これで話が見えてきた。

実はヴァレの名著「Passport to Magonia」にも、日本の過去のUFO目撃譚についてコメントするかたちで、この松村雄亮氏は登場している。ちなみに同書の初版刊行は1969年。となると、こんな推測が成り立つだろう。1960年代、松村氏は世界に開かれたUFO研究を志し、英文雑誌による情報発信を試みる。今も昔も、日本人というのはこの手の試みが苦手であるから、海外の研究者たちにこの雑誌が注目されたであろうことは想像に難くない。気鋭の研究者、ジャック・ヴァレもその一人。この雑誌がきっかけになり、ヴァレは松村氏と連絡をとりあうようになる――。

もっとも、結局のところUFO=宇宙船説をとるCBAと、そのような考え方に懐疑的なヴァレは本質的なところで相容れるはずはなく、この「交流」もしょせんうわべだけのものであったと言うことはできるし、例の「Wonders in the Sky」に引用される「Brothers」も基本的にオリジナルソースを明示していないようなので、「しょせん怪しげな雑誌だったんじゃないの?」というツッコミもあり得るだろう。さらにいえばこのCBA、ある種の終末論を唱えていたことが暴露され、今日ではある種のカルトのようにみなされることも多いし。

だがしかし。1960年代という時点で、この手の情報発信にチャレンジし、それなりの反響を得たのだったとすれば、こいつはソコソコ評価すべきことなのではないか? それに、当時のCBAはそれなりにキチンと海外のUFO情報を紹介するマジメな取り組みにも取り組んでいたのではなかったか? あるいは、これは評価されるべきことかどうかは微妙だが、縄文の遮光器土偶をエインシェント・アストロノーツと関連づける議論を始めた「功績」(笑)は、たしかCBAにあるんじゃなかったか?

この「BROTHERS」が1960年代の世界のUFOシーンに与えた影響というのはどのようなものだったのか? 資料も散逸しつつあるとは思うのだが、才ある方にそのあたりをじっくり調べていただけたら、などと思うのである。いや、とゆーか、そもそもCBA興亡史みたいな、その全貌を明らかにする本があればいいのだ。読みたいぞオレは。そういう本があれば。まぁ大宅壮一賞が取れるハナシとは到底思えないけれども。


ジャック・ヴァレに学びたい。 [UFO]

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ジャック・ヴァレの3部作「ディメンションズ」「コンフロンテーションズ」「レベレーションズ」読解プロジェクト完了。ふつうこういうときは「××3部作」という言い方になる筈なんだが、われながら××の部分が思い出せぬ耄碌ぶりである。

まぁそれはそれとして、世の風潮は「うーん、いまさらUFOでもあるまいヨ」ということだと思うのだが、ヴァレはスピルバーグの映画「未知との遭遇」にでてくるUFO学者ラコームのモデルとかいわれてんのに、その人がどんな問題意識でどんなことを論じてきたのか、ほとんど知られていないというのは如何なものかという思いもあるぞ。

とゆーか、そもそもあの映画のコンセプトはヴァレという人の思想と全然違うので、オレとしてはいったいどこが「モデル」なんだ、誰がいいだしたのだ全然納得できん。単に演じたのがトリュフォーだったので「フランス人つながり」、ぐらいの意味しかないではないか。

閑話休題。UFOに関心がある人ならこの人の議論には一度耳を傾けてほしいものである。どうやって、などとヤボなことは聞かないように(笑)。


追記
えーと、ググったりいろいろしてみたら、どうやら「エイリアン・コンタクト3部作」でいいらしい。


「空飛ぶ円盤の殺人光線で男性殺害さる」トム・リンガム [UFO]

例のエイモス・ミラー事件で、magonia00さんが発掘した「Flying Saucers」1968年10月号の記事「MAN KILLED BY DEATH RAY FROM FLYING SAUCER」であるが、またまたお節介といわれそうだが、訳してみた。今ンとこハッキリしないのだが、最初の捏造元とおぼしきタブロイド「Midnight」の記事をそのまま転載した、という前提で訳しております。

なんか変だとかいうご指摘があれば直しますのでよろしく。


「空飛ぶ円盤の殺人光線で男性殺害さる」 トム・リンガム


空飛ぶ円盤により不可解なる殺害を被った犠牲者が、また1人現れた。ニュージーランドのある羊牧場の主が、奇妙な光線で頭を撃ち抜かれたあげく、皮膚も髪の毛も溶け去ってしまうという身の毛もよだつような死を遂げたのである。

それは1968年2月はじめのことであったが、彼、エイモス・ミラー(39)は異常なまでに不可解な状況で殺害された。

彼の息子であるビル(17)はその死を目撃していたのだが、さらにその遺体はニュージーランド・オークランドの第一級の医師たちにより検視を施されてもいる。

が、現時点の状況をいうと、警察当局は沈黙を守ったままこの件では何人も訴追しておらず、かつ公には報道機関にもさらなる情報を一切発表していない。

羊牧場の経営者の死にかんして彼らが知った事実は、捜査当局をして、この事実をうやむやにし、お宮入りのファイルに突っ込んだほうが良いと思わせるほど衝撃的なものだったのだ。

つまり、エイモス・ミラーは明らかに、未知の存在ないしは奇妙な空飛ぶ乗りものに搭乗している存在――換言すれば空飛ぶ円盤に乗っている生物――に殺害されたという確証が得られたのである。

そもそもこの事件は、最初から紛れもない殺人事件とみなす他ないものであり、警察当局が隠蔽を始める以前に、当「ミッドナイト」紙の記者は(次に示すように)この事件の全貌をつかんでいたのである。


2月2日、エイモス・ミラーはニュージーランドの彼の牧場で死んでいるのが見つかったわけであるが、その後、彼の息子のビルは警察に電話で通報をした。

その少年はほとんどヒステリー状態で、お父さんが空飛ぶ円盤に殺された、と言い募ったのだった。

警察が彼の農場に着いて捜査を始めたところ、ミラーは額の皮膚が半分消え失せた状態で、小さな小川のところに倒れ伏しているのがみつかった。彼の息子は尋問のため拘束され、重要参考人として留め置かれた。が、彼はただ、父親の死はUFOのせいだ、と言い募るばかりであった。

「朝方、僕たちは外に出て塀の修理をしていたんです」。彼はそう警察に供述した。

「お父さんと僕は別々に仕事をしてたんだけど、突然、ラジオの短波放送を聞いてる時にきこえるみたいな、甲高い、短波放送の音がしたんです」

「周りを見回したんだけど、最初は何も見つからなかった。でも、僕たちの右手の方に森があって、そっちのほうにそいつが浮かんでいるのが見えたんです」

「僕たちは手にしていた道具を落としてしまって、口もポカンと開けて呆然としていました。それは200ヤードほど先にあって、地面からはだいたい40フィートほど上に浮いていました」

「そいつはじっと静止していました。ヘリコプターみたいだったけど、形は全然違いました」

「形は円くて、てっぺんに突き出た部分がありました。周りには小さな窓が幾つかがありました。本当にハッキリ見えました」

「それでそいつの周りには輝く光が見えていて、そいつをクッキリと浮かび上がらせていました。そいつはそこにしばらく滞空していたんだけど、底の部分からとがったものが3本下に伸びてきたんです。着陸ギアだったんだと思います。だって、すぐあとにそれが地面に届いて、3本の脚の上に立つようなかたちになったから」

「僕はどうしたらいいのかわかんなかった。でも、お父さんは『行ってみよう、ビル。コイツはよーく見ておかないといけないぞ』と行って、その船の方に走っていってしまいました」

「僕はお父さんに、戻ってきて、って言おうとした。でも、お父さんは全然怖がっている風がなかった。その宇宙船はちょっと木で隠れたようになっていたんだけど、ちょうど距離が半分ぐらいのところに小川があって、お父さんはそこで立ち止まったんです」

「そしたら、明るい光がお父さんのほうを照らし出したのが見えたんです。船を取り巻いていたのと同じ感じの光でした。太陽は出ていたけれど、目に見えた。それぐらい明るい光でした」

「それでお父さんは地面にバッタリ倒れてしまった。怖くなってしまって、僕は一歩も歩けなかった」

「お父さんが倒れるとすぐに、その船はブンブンいう音をたてながら空中に昇っていきました。それから、そのあとを追い切れないほどの速さで、一気に空に飛び上がっていきました。すぐに姿は見えなくなりました」

ビルが警察に語ったところによれば、彼は父親のもとに駆け寄ったが、すでに死んでいた。父親の頭の皮膚は半分がまるごと消失していた。

警察が最初にしたことといえば、この少年のイマジネーションの豊かさを「大したものだ」と褒め称えることであったわけだが、二番目にしたのは、少年を監獄にぶちこむことだった。

遺体の検視が行われる一方で、警察は死亡現場一帯のチェックを型どおりに行った。彼らはそこでちょっと気になる発見をした。ビルが「円盤が着陸した」と言ったあたりで、半径60フィート
ほどの円環状の痕跡が地面に残っていた。

そこには焼け焦げたような痕があったのだが、そのヘリのあたりには地面がへこんだような場所が3箇所みつかった。それはまるで、その場所に何やら非常に重いものが置かれたことを示唆しているようにみえた。

この現場はすぐさま警察により封鎖され、記者たちが近づくのも禁止されてしまった。

そうこうするうち、検視の結果も出た。死因は不明だった。

検視をしたチームのヘッドを務めたジョン・ホイッティ医師はこう語った。

「これは私もいまだかつて見たことのない珍しいケースです。頭蓋骨から皮膚が失われているという点を別にすれば、体には何の痕跡もないのです」

「死者が頭部を殴打されたという証拠は一切ありません。それから、頭部の組織が消失していることの説明がどうしてもできないのです」

「同様に不可解なのが、この男性の骨の状態です。リンの成分がまったくないのです」

「なにが原因でこんな風になってしまったのか、全くわかりません」

この事件と、骨からリンが検出されなかったことには何らかの関係がある。

オーストラリアでは昨年、何十人もの人々により引き続きUFOの目撃がなされており、一帯では家畜の群れがそろって死んでいるのも見つかっている。が、その死体にはとりたてて外傷は見つかっていない。

また、その解剖をしたところ、通常あるべき骨中のリン成分はなぜか消失していた。

ビル・ミラーは拘束されてから5日後、釈放された。この事件について、このほかには何も語っていない。

また、ミラー家の家族たちも、記者たちに対して「警察に言われたから」としてこの事件について語ることを拒否した。



改めて手元の南山宏著「UFO事典」(徳間書店、1975)みたら、ホイッティさんのセリフとか、ほとんどこのマンマでした(訳文はオレ流なので当然違うけど)。南山さんのネタ元は「Flying Saucers」でまず間違いないみたい。で、お持ちでない方のために、当該ページ載せときます

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エイモス・ミラーについてのテキスト [UFO]

例の「エイモス・ミラー事件」であるが、研究家のmagonia氏、本城達也氏らの活躍により発掘された「New Zealand scrapbook」(April 1968-September 1968, p165)というテキスト(本だかパンフレットだか何だかわからんのだが)があって、本城氏のASIOSサイトに該当部分を起こしたのが掲載されているんだが、これをザックリ訳してみた(ちなみにASIOSサイトには興味深い続報も随時掲載されているようで要注目である)。

よくわからんところは適当に流してるので誤訳している可能性は高いが、概略こんな感じということで。

宇宙船の光線がニュージーランド人を殺害

奇怪な殺人光線を発する空飛ぶ円盤が、ニュージーランドのある牧羊農場主を殺害したが、秘密主義をとる政府はすべての情報を封じ込めてしまった。

39歳のエイモス・ミラーは、一分前にはそこに立っていたのだ。ところが次の瞬間、彼は地面に倒れており、頭部は空中に浮かぶ宇宙船が放った光線により焼け焦げていた。これはSFなのか? 

いや、それ以上のものである、とはいえる。それはカナダの、いささか胡散臭いかもしれないが、とりあえずはジャーナリズムが報じた話なのだから。

この空飛ぶ円盤による殺人に関するセンセーショナルな話を報じたのは、雑誌「ミッドナイト」。この「ミッドナイト」誌のトップ記事によれば、この事件は今年2月の早い時期にニュージーランドで起こった。しかし、「ミッドナイト」誌はその場所がどこだったかは書いていない。

記事はこう記している。解剖後、「エイモス・ミラーが不思議な空飛ぶ乗り物に搭乗していた未知の生物により殺害されたことが明らかになった。そこにはもはや疑問の余地はない」。

大衆の身の安全という問題にかこつけて「ミッドナイト」誌はこう言っている。「大衆が知りたがっている事項であると確信しているが故に本誌はUFOによる殺人事件について報じてきたわけであるが、これはその2件目となる」。

グラフィックや死んだエイモス・ミラーを写したゾッとするような写真を掲載しつつ、「ミッドナイト」誌は、死亡者の出たUFO事件についての事実を敢えて隠蔽しようという当局の姿勢を暴き出そうとしている。

しかし、「ミッドナイト」誌は決して「事実に徹しよう」とか「事実を注意深く扱おう」としているワケではない。「解剖を担当したオークランドの優秀なる医師チーム」のヘッドとして登場してくる医師の名前は、ニュージーランドの医師登録者のリストには載っていない。「ミッドナイト」誌によれば、その人物はジョン・ホイッティ博士だというのだが、記事には彼の言葉が引用されている。「私もこれまで見たことがないおそろしく不思議な事例だ。頭蓋部の皮膚が失われているほかは、体に何の痕跡もない」

「サンデーニュース」紙は、「2月初めにエイモス・ミラーが死亡した」「そのような人物の死体解剖が行われた」といった事実が本当にあったのか確認しようと試みたが、それは失敗に終わった。

ニュージーランドのUFO研究団体の会長であるヘンク・ヒンフェラー氏によれば、「ミッドナイト」誌は最近になって、また同様な記事を載せたのだという。この二つの記事には明らかに共通点がある――事実関係、場所、名前、証拠といったものがハッキリ示されていない、という点である。

「この雑誌はこうしたセンセーショナルな出来事が起きた場所として、単にあまりなじみのない地名を適当にくっつけたんだと思います。ほとんどのカナダ人はニュージーランドのことなんて聞いたことがないから、この手の話には好都合だったわけです」

「ミッドナイト」誌のシカゴのオフィス、モントリオールのオフィスに電話をしてみても、反応はなかった。

「サンデーニュース」が電話をかけたのは北アメリカ時間で午後5時30分のころだった。たぶん彼らは、新聞社にしてはあまりに早い時間に会社を閉めてしまうのだろう――名前こそ「ミッドナイト」とついてはいるけれど。

というわけで、その新聞はまたぞろ、何かしら本当にあったという触れ込みの話に乗っかってトンチンカンなことを書いてしまったのではないか。

が、結局のところ、ニュージーランドじゅうに「エイモスさん」は何人いると思っているのだろう? ともあれ、面白い話をでっち上げてくれたものではある。


半世紀近い時を経て明らかにされるエイモス・ミラー事件の深層(笑) [UFO]

エイモス・ミラー事件について以前書いたことがあるんだが、何かここにきて有志によるリサーチが進み、なんとなく真相が明らかになりつつあるもよう。まとめはこのあたり

とりあえずカナダの「Midnight」というタブロイド紙がでっち上げた事件らしく、現場とされたニュージーランドの皆さんが「くそぉ、ニュージーランドとかいやぁ人外魔境、こんな事件もあるだろなー的感覚でネタ作りやがってコノヤロウ!」と怒っているとおぼしき状況がホーフツとされます。

というわけでこれからどうなるか、全国1000人のエイモス・ミラーファンの皆さん、刮目して待て(笑)
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ユングとUFO [UFO]

米Wikipedia の「UFO hypotheses」という項目を眺めてたら、ユングの話がでてたので、以下にその部分のみ試訳。
『空飛ぶ円盤―空に見えるものについての現代の神話』を以て、カール・グスタフ・ユングは社会心理的仮説(PSH:Psychosocial hypothesis)の創始者の一人とみなされている。一方、同書の中で「シンクロニシティ」の概念を用いているが故に、彼はUFO現象を超常現象として説明する論者の始祖ともなっている。しかしユングは、時に「UFOとは心理学的な理由で出現するものかもしれぬ」という議論を展開しながらも、レーダーと同時にUFOが現認された一部事例を引用して「知性がコントロールしている物理的な物体としてのUFOが存在する可能性」を語っていた、との記録もある。ユングは地球外起源仮説の可能性についてもあり得べきものとしてまじめに考えていたのである。たとえば、APは「純粋に心理学的な考え方だけですべてを説明することはできない」という、1958年の時点での彼の発言を引用している。曰く、空飛ぶ円盤というのは現に存在するものであって、「知的な存在により操作されていること、人間に似た存在により操縦されていると考えてもよい証拠がある。ハッキリ言えるのは、これが単なるウワサ話ではなく実際に何かが目撃されているということだ。(中略)もしこうした現象が地球外に起源をもっていることが明らかになったら、すなわちそれは惑星を超えた知性の結びつきが今ここに存在することを証すものとなる。(中略)そうした機械を作り上げることができたのであれば、すなわちそれはわれわれを遥かに超越した科学技術があることを証明しているということであり、そのことはもはや否定できぬこととなろう」*

*「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン」「スターズ・アンド・ストライプス」などの各紙(1958年7月30日)に拠る

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