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人類の文化というものを考える(笑) [身辺雑記]

考えてみるとオレも若い頃は左翼かぶれであった。何かっつーと「それは単なるイデオロギーに過ぎない」とかなんとか、わかったようなクチをきいていたものであるが、この左翼流の「単なる××に過ぎない」という言い回し、実はなかなか使い勝手が良い。「アンタが後生大事に抱えているモノってゆーのは、よくよくみればインチキじゃんガラクタじゃん虚偽意識じゃん」といって相手の拠り所を奪ってしまおうという、「いきなりテキの本丸急襲」みたいな論法である。

で、そのバリエーションでしばしば左翼がもちだす議論に「明治以前の天皇にはそれほど権威があったワケじゃなくて、天皇を万世一系のスメラミコトとかいってあがめ奉る近代の天皇制なんてものは結局明治以降の作りものなんだよネ」というのがある。

皇室の祭祀なんかも長年途絶えてたのを明治になって復活させたものが多い、みたいな話もどっかで聞いたおぼえがある(村上重良氏の言だったような気がするが定かではない)。つまり、皇紀は2600年だか何だか知らんけれども、「日本民族はその間ずっと天皇を仰ぎ奉ってきた」と言い募るのは完全なフィクションなんだから「なにをそんなに有り難がってんだヨ」というツッコミである。

そりゃまぁ確かにそうなのだろう。

そもそも江戸時代には『国』といえば『××藩』というイメージしかなかったというし、そこに近代的な国民国家=ニッポンという概念を立ち上げるためには何かしら象徴的なモノというか、依り代が必要であった。そこで「あぁそういや倉庫の奥に『天皇』ってものがあったなぁ」ってんで倉庫の奥から引っ張り出してきたお神輿が天皇だった、と。そういうことではないか。

ただ、最近ちょっと考えていることがある。「それって実はみんな思っているほど長い歴史があるわけじゃなくて、実は最近でっちあげたモノなんだよね」といって崇敬者をシラケさせようというこの論法は本当に有効なのか。

たとえば「お墓」とか「埋葬」のことを考えてみる。

遺骨を海にまく散骨とか木の下に埋める樹木葬とか最近はいろいろあるようだが、何となく「でも日本人はやっぱり火葬してお墓に骨ツボ納めるのがデフォルトじゃネ?」という風にワレワレは考えがちである。ところが実際は、明治時代になっても日本では土葬がメジャーだったらしい。つまり棺桶を埋めてその上に何か目印の石か何かを置いてオシマイ、というヤツである。時代をさかのぼれば、なんかその辺の草っぱらにゴロンと投げてオワリということもあったそうな。

いまのジョーシキからすれば、「投げ捨てる」のは勿論、「棺桶埋めて墓標たててオワリ」みたいなのはなんとも気持ちの落ち着かないふるまいではないだろうか(そもそも土葬自体実質禁じられてるということもあるが)。たかだかこの150年間の間にすっかりワレワレの常識はラディカルに変わっちまったのである。

いま・ここに生きている人間に「あぁ、こりゃ実にしっくりくるねェ」と感じさせるような制度というのは確かにあるワケだが、その説得力が別に「実際に長年続いてきたから」ではなく、そりゃ歴史的にみればそんなに古いワケではないけれどもまるで2000年続いてきたかと誤解させるぐらいの説得力を感じさせるから、というトコから滲み出してる場合もけっこーあるんではないか、という話だ。

となると、最近の作り物だから軽視していい、とは軽々に言えない。とゆーか、お墓にしても天皇制にしても、おそらくそのスキームがガラッと変わったときにはそれなりの社会的文化的な変動があった筈で、そういう変換点にあって、時代にマッチした説得力のあるシステムを作り出すというのはすげぇ発明ともいえるワケであり、むしろ褒めるべきこと、文化の勝利といえるのではないか?

いや、ここまでいくと何か近代天皇制バンザイに限りなく近づいてしまうので元左翼シンパからするとナンなんだが、考えてみると、こういう議論の射程は相当に深いような気がしないでもないぞ。

たとえば「生物としての人類」というものは何百万年もの歴史をひきずっているわけだが、だからといって「生物学的な本能に逆らうのはイケマセン」ということになれば、「オスが無理矢理セックスしたがるのは本能なので仕方ない」という橋下徹みたいな下品な結論になってしまう。そうではなくて、「いや、生物種としては確かにそういう側面もあるんですが、そこはうまくコントロールして文明を築いているのが我々人間なのです」といってのけてこそ人間は威張れるのではないか。

・・・とまぁ、何だか酔った勢いのチラ裏的メモになっちまった。後日機会があればまた。


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