SSブログ

「検証 予言はどこまで当たるのか」 [読書感想文]


検証 予言はどこまで当たるのか

検証 予言はどこまで当たるのか

  • 作者: ASIOS 菊池 聡 他
  • 出版社/メーカー: 文芸社
  • 発売日: 2012/10/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



今回の感想文はASIOSの新刊『検証 予言はどこまで当たるのか』(文芸社)である。

ここのところ超常現象本というジャンルが何となく元気がなくて、まぁ都市伝説方面なんかだと山口敏太郎のコンビニ本とかけっこうよく見かけるんだが、単行本だとなかなか触手の伸びるようなのがない。

そんな中でASIOSという団体はけっこう頑張って、きちんとした本を出している。ASIOSとは何かというと、正式名称は「Association for Skeptical Investigation of Supernatural」というらしく、正式名称もあるのかもしれんがつまりは「超常現象について懐疑的に研究する協会」である。この方面の研究者たちが集結し、様々なネタについて謎解きをしていくというのが基本スタンスらしく真面目に調べているので、今回の本などもついつい買ってしまったのである。

で、「なんと。吃驚!」みたいな話はあんまりないンだが、知らなかったことも相当書いてあるし、年々耄碌して「アレのことよ、アレ。何て言ったっけ、アレよ」みたいな言葉を発しはじめたオレにとってはよくできた資料本みたいなところもあって、たとえばノストラダムスの言う「ヒスター」はドナウ川の別名である、みたいなくだりを読んで「ああ、そうだったそうだった、ライン川じゃなくてドナウ川なんだよネ」とか相づちをうったりするのである。細かい話はすぐ忘れちまうんだろうがw(ちなみに今回登場してノストラダムス論を書いている山津寿丸氏はちゃんとテキストクリティークとかした上で史料を読み込んでいるとおぼしき本格派で、かなり凄い)

ただここで若干苦言を呈させてもらうと、巷間伝えられている「伝説」と、その謎解きにあたる「真相」のパーツとを並べて項目を作っていくという構成は、たぶん「と学会」の本あたりに倣っていると思うのだが、そろそろ食傷気味である。限られたスペースで明快な議論を展開していくためには便利な手法なのだろうが、何かQ&A的というか学習参考書的というか、やはり「文章を味わう」みたいな喜びはあんまり得られない。

なんというかなぁ、UFOでも臨死体験でも「まぁ脳内現象と考えて大外れはないよ」みたいな議論は当然有力なのだが、しかし「でもそれだとどっか辻褄があわないところがあるんだよネ」的な過剰な部分があって、そういう二重底が奇現象の魅力だったりする。こういう明快な構成だとどうしてもそのあたりのニュアンスがそぎ落とされてしまうのである。ま、しかしそれは読み手の勝手な言い分であって、そもそも本書はコンセプトが違うような気もする。ホントはそんな文句をいわずに、国書刊行会が再刊を予定しているという『何かが空を飛んでいる』をひたすら待つべきなのであろう。と反省。

ま、ただ、構成の単調さみたいなトコを何とかカバーしようという工夫はもう少しあっても良かった。もちろん担当編集者もその辺はうすうす考えてはいたらしく、今回の本には菊池聡氏の認知的不協和理論をめぐるコラムとか、秋月ペンパル氏のUFOエッセイとか執筆者座談会とかも挟み込んでいて、そういうパーツは実際なかなか良いのである。もう一押し、であった。

なお、ついでだから編集者に対して、もひとつ苦言を呈しておくと、中に『「伯家神道の予言」は本当に存在するのか?』という項目があるんだが、これは長すぎた。要するに神祇伯を代々襲ってきた白川家には天皇が必修すべき祭事が伝えられているんだが、明治天皇以降これをやってこなかったので日本は滅亡するであろう、みたいな話である。しかし、そもそも皇室の祭祀じたい明治時代に適当に作った(古代に倣って復原したという理屈もないではないが)ものが多いというし、「伯家神道の秘儀」みたいな話は初手から眉唾でアル。ところがこの項目、何か途中からあんまり予言と関係のない「そもそも伯家神道とは何か」みたいな話が延々とはじまってしまい、とても違和感がある。本のコンセプトというものはもっと大事にしなければならない。

最後にもうひとつ、巻末の執筆者座談会に編集者らしき人物が出てくるんだが、例のワールド杯サッカーで有名になった予言ダコのことを「パウロ」と言っている。聖書の予言とかでアタマがそっち方面にいってしまったのだろうが、ここはパウルでしょう(笑)。編集者が足を引っ張ってはいけません。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。