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小林朝夫『本当は怖ろしい漢字』を読む [小林朝夫さん]

「関東大地震近し」とか言って人々の恐怖心を煽ったあげく、そのようなデマを信じ込んで接近してきた未成年をかどわかして性犯罪で逮捕され、最終的にはその容疑を認めて釈放された小林朝夫さんであるが、その後も有料ブログを使って「地震近し」とか全く根拠のない「予知」を続けて世を惑わせているらしい。どうもこういう御仁は徹底的に論破してさしあげないと全く反省をしないようである。

で、しょうがないので、その信頼性をチェックするためにこのヒトの書いた書物でも取り寄せて、この人が信頼すべきヒトなのかどうか一回ちゃんとその真偽を明確にしてやるに如くはないと考えた。既に彼の『富士山99の謎』なる本が出鱈目であることは識者によって指摘されているようだが、オレ自身も別の本を調べてやろうではないかと思い立ち、シャクではあるが、100円ちょっと払って小林朝夫『本当は怖ろしい漢字 特別編集版』(彩図社)というのをブックオフで買ってしまったのだった。ま、平原綾香のCDを買うついでだったので、100円ぐらいいーやというノリではあったのだが。

で、届いた本なのだが、いかにも胡散臭いことばっかり書いてある。いちおう参考文献には白川静とか藤堂明保とか、そうそうたる学者の本を上げている。ちゃんと批判するにはこの辺の本にも目を通さねばならんので、実はそういう批判作業というのは大変なのである。またいずれ機会を改めてちゃんとした批評をして差し上げようと思ってはいるが、とりあえず最初の方を読んで明らかに出鱈目というところを発見したので、とりいそぎ報告しておこう。

冒頭の「七」という文字についての項で、彼はこんなことを書いている。

かつて中国では、皇帝の顔に泥を塗るなどの大失態を犯したモノは、生きてはいられなかった。残された道は自害のみ。腹を十字に切らなければならないのだ。日本でいう切腹である。




その際に「十」の形に切った切り口の下の方から血まみれの腸が外に飛び出してしまう。「十」という字に、飛び出た血だらけの腸の形を付け足したものが「七」なのである。


さらに

天に昇った死霊を弔う行事である七夕。亡くなった者を供養する最初の日は初七日。喪に服すのは七日の二乗である四十九日。
このように「七」には常に「死」がつきまとう。



確かに漢和辞典などを見ると、「七」は「切」の源字だというようなことが書いてある。要は、最初「切断する」という意味の文字として使われていたのがのち序数に転用された、という事なのであろう。しかし、いろいろ調べてみたところでは、「七」に「切る」の意味はあっても「切腹」という意味はない。ちなみに「十」に「切腹」の語義があるというソースもオレにはみつけられなかった。

いや、そもそも中国に「切腹」などという慣習があったのだろうか? そこで早速ググってみたところ、確かにそれに似た風習はあったようなのだが、これは「剖腹」といい、「自分の仕える人の死を追って切腹する」ことを意味するらしい。小林サンのいう「罰としての切腹」とは全然違うもののようだ。

というわけで、ここまで調べてみたところでは「中国に罰としての切腹という風習はあったのか?」、さらに「罰としての切腹を意味する文字として<七>が使用されていたというのは本当か?」という、重大な疑問が生じてしまうのである。

ま、そこは結論をペンディングしてさしあげても良い。しかし、最後に小林サンは、「初七日だとか四十九日だとか葬祭関係で「七」絡みの数字が出てくるのは、この七という文字のまがまがしさと関係があるのだ」みたいなことを言いはなっているのだが、これは明らかにウソである。

何となれば、この初七日だとか四十九日だとかいうのはそもそもインドにおける初期の仏教の儀礼に端を発しているからであって、中国起源の「七」という漢字とは全然違うところから生じた概念でアル。仏教が興ったのは紀元前5世紀とか6世紀とか言われてるわけだが、漢字の「七」はその前にとっくに発生してたんじゃないだろうか?もちろんユングみたいに「七」というシンボルの意味はトランス・カルチャー的に人類にビルトインされているのだ、みたいな論法は不可能じゃないけど、小林サンはユングなんか知らんだろう多分(笑)。

というわけで、キッチリ論破するためにはちゃんと調べないとイカンのだが、こうやってみてくると、実にこの記述はアヤシイ。こういう人物の言うことを丸呑みしたらどういうことになるのか。ちょっと想像してみたほうがよかろう。

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