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よくわからん被曝量の計算 [原発]

謎は深まるばかりである。何がかって? 放射線被曝量とがん発生確率の問題である。

「年間に100ミリシーベルトの被曝をすると、がん・白血病になる率は0.5パーセント上がる(らしい)」。これが、このたびのニワカ勉強の結果、俺が得た暫定的な結論であった。で、この前のエントリーで、「生涯累計で100ミリシーベルト」みたいな線引きは無意味じゃないか、って書いた。ところが、「生涯累計で100ミリシーベルトには意味がある」っていう専門家の発言にでくわした。

「文芸春秋」5月号に「本当は一年かかる原発処理」という対談が載っているのだが、ここで放射線治療の専門家だという石川正純・北海道大学大学院教授がこんなことを言っている。

そもそも被曝線量というのは、その日どれだけ被曝したかではなく、これまでの人生でどれだけ浴びてきたか――という「積算」で評価しなければなりません。現時点で統計的にはっきりしているのが、積算で被曝量が100ミリシーベルトを超えると、1シーベルト(1000ミリシーベルト)あたり5パーセント発がんの確率が高まる――ということ。つまり、生涯で積算100ミリシーベルトを被曝した人がいて、生涯のがんの発生率が五〇パーセントであったとすると、それが五〇・五パーセントになるわけです。

なんと、100ミリシーベルトは生涯積算の閾値である、と言っておる。うーむ。だが、たとえば日本人は年間に1.4ミリシーベルトを自然に浴びているという。仮に80年生きると生涯積算で1.4×80=112ミリシーベルト。ん? この時点でもう100ミリシーベルト超えてるじゃん。

するってぇと何かな、80歳ぐらいになった日本人はひとりのこらず100ミリシーベルト被曝ラインに到達しているってこと? それ以降の被曝は、即、がん確率アップに直結するってこと? でもおかしいんだ。一方で石川先生はこんなことも言っているんだ。

世界的に見れば年間10ミリシーベルトの被曝量がある土地もありますし、そこに住む人に健康被害が出ているという報告もありません。

例のブラジル・ガラパリの話らしい。でもつじつまあわなくなるんだ。だって、ここで80年暮らしたとすると、生涯累積は10×80=800ミリシーベルト。すごい多いじゃん? 10年暮らしただけで、もう生涯積算100ミリシーベルト越しちゃうじゃん? それでなんでがん増えないの? 石川先生ッ!!

それとも、この積算100ミリシーベルトっていうのは「自然放射線以外に浴びるもの」って意味かな? でも自然放射線も人工放射線も人体への影響は変わらない、って教わったぞ。 

うぅ、よくわかんねぇ。ここは放射線医学界の池上彰みたいな人に出てきてもらって解説してもらわねーと、納得できん。とりあえず、暫定的に「年100ミリシーベルト」を意識していこうとは思っているんだが、どうもスッキリしない。

俺たち一般市民が情報リテラシーを磨かなきゃらならんのはもちろんだが、専門家ももっと明快な説明をしてほしいぞ。
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NMR

大学院で放射線生物学を学んだ私が解説を試みます.

100ミリシーベルトで0.5%ガン死が増加

というのは,そもそも原爆のときのデータをもとにしています.

これは,一瞬の間に100ミリシーベルト被曝したらこうなった,
というものです

では生涯100ミリシーベルトならどうか?

おそらくは,がんの増加を確認することはできないでしょう.

なぜかといいますと,そもそも体には放射線でできた遺伝子の傷を
修復する能力(DNA修復,などの言葉で検索してみてください)
がありますので,ゆっくりじわじわの被曝では,
修復によって影響が打ち消されてしまうのです.

(放射線以外にも,紫外線,活性酸素や,もともとの細胞のミス
 などで,遺伝子には多量の傷ができます.我々はDNA修復を
 日常的に修復しながら生きているのです.)

では,どれだけのペースの被曝だと問題ないのか?
ここは,色々な条件下で実験,研究がなされていますが
多少幅がある結果になっており,科学者でも意見がわかれています.
(ゆっくりのペース 専門用語で言えば低線量率になればなるほど
 影響が少なくなる というのは専門家でも一致しています)

けれども社会基準をつくるときには,念のため
安全側(つまり悪影響を多くみつもって)に立って

もっとも厳しい条件(つまり一瞬でまとめて被曝した原爆のデータ)
をもとに,100 mSvでがん増加があるという前提で
いろいろな基準をつくっていこう,ということがなされているわけです.

まとめ
・現在の基準は,上に書いた経緯で相当 厳しめにつくられている
・ゆっくりの被曝であればあるほど影響が少なくなるのは確か

年20ミリシーベルトの基準は,そういう経緯でできたものです.
これだと5年で100ミリシーベルトになりますが,
ゆっくりであるほど影響が少なくなるわけなので
おそらくガン死発生の上昇を確認するのは難しいと思われます.
by NMR (2011-11-30 12:50) 

NMR

追記

上の例は極端な例ですが
月100ミリシーベルトでも大丈夫,という教授がいます.

この人の話も荒唐無稽なわけでもなく,
培養細胞や動物実験で,修復能力を測った結果から逆算して
月100ミリシーベルトを導きだしています.

このへんの結果は実験条件や,計算方法で多少かわってきますので
これをいきなり全てに適応というのはちょっと先取りしすぎですが.

いちおう,実験にもとづいてそう言ってる学者もいるんだ,
ということです.

今後,研究が進めば,基準がゆるめられるかもしれませんね.


by NMR (2011-11-30 13:02) 

macht

NMRさん、どうもありがとうございました。

なるほどー、キホンは「瞬時に100ミリシーベルト」で0.5%増、って理解でよろしいわけですな。

「生涯累積100ミリシーベルト」で0.5%増、みたいな発言をしてた石川正純先生も、まぁ最悪の場合を想定してもこの程度、的なニュアンスで話してたのかもしれませんなあ。ガラパリのくだりも、「ぶっちゃけていえば、あれぐらいじゃガン増えないんだよね」みたいな感じだったのかな。

ともかく「正しく怖がる」上で勉強は大事だとおもいました。
by macht (2011-11-30 22:33) 

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